お米の新商品情報
米100%のクラフトビールで新たな可能性を拓く【株式会社RICE HACK】
米100%のクラフトビールで新たな可能性を拓く【株式会社RICE HACK】
日本の米と米食文化を後世に伝えるべく起業
原材料にこだわり、その土地で育った素材を使用して、独自の風味をつくり出すクラフトビール。国内各地に小規模なブルワリーが次々と誕生し、個性豊かな銘柄がクラフトビールブームをけん引しています。各地の銘柄を飲み比べたり、そこでしか味わえない一杯を求めて旅に出たりなど、様々な楽しみ方ができるのもクラフトビールの魅力といえるでしょう。
日本でビールというと、一般的には麦芽(大麦)とホップ、良質な水でつくられる醸造酒を指します。クラフトビールを手がけているブルワリーでは、これに副原料として米やトウモロコシのほか、香辛料、糖類などを加えて、複雑かつ多彩な味のバリエーションをつくり出しています。
- 三重県桑名市にブルワリーを構え、米100%のクラフトビール(※酒税法上は発泡酒に該当)づくりに取り組んでいる株式会社RICE HACK(以下、RICE HACK)代表取締役の道口靖央さんは、開発のきっかけを次のように語ります。
「小麦アレルギーをもつ人にとって、麦芽由来のビールは摂取を控えなければいけない飲み物の一つ。それならグルテンを含まないお米を主原料にして、おいしいビールをつくれば、誰でも気軽にビールを楽しめるではと考えました」
大手菓子メーカーで研究職として商品開発に携わってきた道口さんは、お酒好きだったこともあり2016年に唎酒師(ききさけし)の資格を取得します。日本酒について勉強をしていくなかで、米は日本の食文化に欠かせない存在でありながら、その消費が年々減少しており、このままでは日本の米の文化が廃れてしまうのではという危機感を覚えたそうです。“後世に日本の米の素晴らしさや米食文化を伝えたい”という想いから、道口さんが選んだのが米を使ったビールづくりでした。
納得のいく味わいを追求し、孤軍奮闘
- 道口さんは長年勤めた会社を退職し、オーストラリアへ渡りビールづくりを学びました。当時、米だけでつくったビールがなかったため、海外メーカーのビールや麦以外の素材を使ったビールを取り寄せて分析や研究を進めました。
その上でクラフトビールの試作品をつくり、出来映えをチェック、改善点を検討して再び試作をするという作業を繰り返しました。地道な作業の連続でしたが、会社員時代に研究職として培ってきた探究心や分析力、日本酒から学んだ知識や技術が役に立っているそうです。
道口さんのつくるクラフトビールは、数種類の国産うるち米をブレンドして使用しています。そして米を有効活用する一環として、精米時に割れてしまったものや、選別からはじかれてしまった米も一部使っているとのこと。ほかにも、桑名市の特産品であるこめ油の製造過程で出る脱脂米ぬかも使用しています。
- 「麦芽ビールのように製造できないため、酵母の働きが不十分で味が一定しない、香りがよくないなど、課題がいくつもありました。これらの調整には本当に苦労しました」と開発当時を振り返ります。
いくつものトライ&エラーを経て完成した米のビールに、道口さんは「ORYVIA(オリビア)」と命名。
「ORYVIAは、ラテン語のお米(ORYZA)とビール(BEER)を組み合わせた造語です。“ビア”の部分は「経由」を意味する“VIA”という綴りにして、当社がお米を“通して”社会に貢献したいという想いを込めました。ブランドロゴも、お米の粒の中に“米”の文字をあしらって、お米を意識したデザインにしています」と道口さんは教えてくれました。
どちらも「ORYVIA」を味わってもらうことで、多くの人に米の魅力を知ってもらいたいという道口さんの想いが詰まっています。
米から生まれたクラフトビールが、和食の楽しみ方を変える
- RICE HACKは2025年2月12~14日に千葉県・幕張メッセで開催された食品業界の展示会「スーパーマーケット・トレードショー(SMTS)2025」に参加。多くの来場者に「ORYVIA」を試飲してもらいました。「ORYVIA」を味わった人たちからは、「麦芽でつくるビールと変わらない味にびっくり」「苦みが少なくフルーティ」「すっきりとしていて飲みやすい」といった声があったそうです。 上々の評価に、道口さんは「麦芽でつくるビールと同じように、皆さんに楽しんでもらえるお米のビールができました」と手ごたえを感じています。
「ORYVIA」は、香りや苦みが異なる「雅(みやび)・醇(じゅん)・凜(りん)・爽(そう)・和(なごみ)」の5種類で販売を予定しています。機器の搬入や設置が予定よりも遅れてしまったため、製造ラインの本格稼働にはもう少し時間がかかりそうですが、RICE HACKでは、まず「雅」から販売を開始し、ほかの4種類も準備ができ次第、販売していく予定です。
- 道口さんは「グルテンフリーの実践者やクラフトビール愛好家はもちろん、麦芽本来の苦みがなく飲みやすいという特徴を生かし、これまでビールが苦手な人にもトライしてほしいですね。5種類のビールの味わいについては、ラベルで特徴を簡単に説明するとともに、「香り・コク・キレ・苦み」の4項目をマークで表したチャートを入れているので、それを参考に選んでもらえれば」と話します。
そして「和食に合う酒といえば日本酒が浮かびますが、お米からつくられている『ORYVIA』も和食との相性はいいと考えています。フランス料理にワインを合わせるように、『ORYVIA』と和食の“ペアリング”が、食の楽しみを広げてくれるのではと期待しています」と話してくれました。
今後の展開について伺うと、次のように答えてくれました。
「酒米でビールをつくってみたいですね。日本酒の蔵元とコラボして、同じお米からできたジャンルの異なるお酒を飲み比べるのも面白いのでは。また、日本発のグルテンフリービールは海外でもニーズがあると思うので、新たな販路として魅力を感じています。こうした様々なチャレンジを通してお米の魅力を皆さんに知ってもらい、お米の消費拡大や米食文化の継承につながればいいですね」
道口さんの想いと米の新たな可能性を秘めた「ORYVIA」。これからの展開に期待と注目が集まります。
【事業者紹介】
株式会社RICE HACK
三重県桑名市長島町福豊905
https://ricehack.jp/
【販売情報】(2025年3月時点)
2025年4月から名古屋の酒造メーカーを通して東海エリアの飲食店で提供予定。
※酒税法上は発泡酒に該当