お米の新商品情報

見た目の「おいしそう」にこだわって、新技術で生み出した高齢者向けのやわらかごはん【食協株式会社】

見た目の「おいしそう」にこだわって、新技術で生み出した高齢者向けのやわらかごはん【食協株式会社】

高齢者が食欲をなくすのは「食事に楽しさが感じられないから」という気づき

中四国・九州エリアを中心に、お米をはじめ、食品や燃料など、暮らしの必需品を届ける広島の専門商社食協株式会社。愛情・健康・快適・安全の提供を企業理念とする同社では、新たな市場への挑戦として、介護食や療養食に適した「カロリーサポートやわらかごはん」を開発しました。

  • 「カロリーサポートやわらかごはん」は、咀嚼や嚥下機能に課題を持つ高齢者に向けた、見た目の粒感を残し、舌でつぶせるやわらかさを有した、おいしくカロリーが摂取できるごはんです。

    内容量は1食分150g。湯煎10分で手軽にいただけます。

    「既に市場では、多くの介護用加工品が販売されていますが、主食のご飯関連のものは数少なく、それぞれに外観、食味、栄養、価格等の課題がありました」と商品開発部部長の藤田芳和さんは語ります。そこで、競合品の課題を解決するため、介護施設の管理栄養士や言語聴覚士など、さまざまな方々にリサーチ。その中で、ご飯の見た目の重要性に気付かれたそうです。

    「お年寄りは、食が細くなる中で、嚥下機能が低下すると、ミキサーで潰したようなお粥状のご飯を食べることになります。そうすると、食事に楽しさが感じられなくなり、さらに食欲がなくなってしまう。食欲がなくなると、栄養が十分に取れないという負の連鎖につながります」。

    そこで、藤田さんがまず重視したのは、見た目で「おいしそう」と思ってもらうこと。そのために、若い頃から食べ慣れたご飯の粒立ち感を追求。見た目は米の一粒一粒がはっきりしたご飯ながら、舌で潰せるやわらかさを保持し、低栄養を予防するために、少量でもカロリー摂取ができる商品を目指して開発を進めたそうです。

「見た目」と「やわらかさ」だけではない開発の難しさ

  • ご飯の粒感を残しつつ舌で潰せるやわらかさを実現するために、協力を得たのは広島県立総合技術研究所食品工業技術センター。同センターでは、2002年に特許技術「凍結含浸法」を考案。食材の中に酵素等の物質を急速にしみ込ませることで、食材の組織を分解し、食材そのままの形を保ったまま、歯茎や舌で潰せるほど軟らかい食材をつくることができる技術で、「食のバリアフリー」を実現する手法として県内外で注目されています。藤田さんはその技術をベースに、お米の内部も表面も同じように柔らかくさせるために、米の品種や製法を検討し、試作を重ねました。

    「最初は、柔らかくなれば良いだろうと試作して、いろんな施設を訪問して評価していただきました。すると、柔らかいだけではダメで、口に入れて咀嚼した時に、きちんとまとまって飲み込めないと、むせたり詰まらせたりして危険だということを知りました」。
    さらりとしていながら、適度なまとまり感を持たせるために試行錯誤を繰り返し、ついに納得の商品が完成し、特許を取得。高カロリー化も実現し、おかゆの2/3の量で同等のカロリーが摂取できるようになりました。
    製法は確立しましたが、量産化という壁もあったそうです。製造は外部委託になりますが、酵素反応したお米は通常の製造ラインの炊飯器では上手に炊けません。委託候補を1社に絞り、トライアンドエラーを重ね、ようやく量産化の目処が立ちました。

「カロリーサポートやわらかごはん」を日常に。さらにお米の新しい食べ方を提案し続けたい

  • 「この『カロリーサポートやわらかごはん』は、通所介護や在宅介護など、家で食事をされている高齢者の方々に、日常のご飯として食べていただきたい。そのためには、さらに低コスト化を図り、地元のスーパーなどの量販店で購入できるようにしていきたい」と語る藤田さん。そのために、まずこの商品を広く知ってもらう必要があると考え、わかりやすいリーフレットを作成し、展示会に出展するなど、PRにも力を入れています。現在、興味を持っていただいたお客様から電話で注文を受けて宅配便でお届けするなど、試験販売を開始しています。
  • 「私はお米の一番おいしくて安価な食べ方は、炊飯器で炊いたご飯だと思っています。とはいえ、ご飯の需要を今後増やしていくのはむずかしい。でも、困っている人の役に立つ新しい加工法、新しい食べ方を提案し続けることで、お米はまだまだ利用されていくはずです。ご飯や米粉の商品開発は世の中である程度進んでいるため、今後、新たな可能性があるのは、米と米粉の間、今回のようなゾル状やペースト状の米商品ではないかと。新しい素材としての役割や利用方法を突き詰めて開発し、お米の新しい食べ方を提案し続けていきたいですね」(藤田さん)。

 

【事業者紹介】
食協株式会社
広島県広島市南区松川町5-9
http://www.shokkyo.co.jp

 

【販売情報】※販売中(2023年12月時点)
電話注文:082-495-1502(食協・商品開発部) ※発注ロット:4ケース(40食)(1ケース:150g×10袋)