お米の新商品情報
設立50周年の節目に挑む「お米」の新境地。冷凍おにぎりでアメリカ市場を切り拓く【幸南食糧株式会社】
設立50周年の節目に挑む「お米」の新境地。冷凍おにぎりでアメリカ市場を切り拓く【幸南食糧株式会社】
米文化を伝える「メディア」としてのおにぎり「ふくまる」の誕生
- 精米業から歩みを始め、日本の食卓を支え続けてきた大阪府を拠点にする幸南食糧株式会社(以下、幸南食糧)。同社は今年(2026年)、設立50周年という大きな節目を迎え、その長い歴史の中で常に米の可能性、価値を追求してきました。いまでは扱う米の品種は300を超えるまさに“米のプロフェッショナル”です。そして近年、食の多様化やライフスタイルの変化に伴って日本人の米との関わりは加速度的に変化を続けています。こうした潮流にあって、同社は「お米を単なる農産物として売る」という従来の枠を超え、米の持つ真の価値と魅力を再定義し、広く世界へ伝えるという強い使命感を抱くに至りました。
その決意を具現化するプロジェクトとして、2023年に輸出専業部門が発足。同部門がターゲットに定めたのは、健康意識の高まりや時短・簡便性のニーズから冷凍食品市場が急速に拡大しているアメリカ市場です。日本のソウルフードである「おにぎり」を武器に、2030年までに売上15億円という意欲的な目標を掲げた幸南食糧の新たな挑戦について、プロジェクトに携わる4名に話を聞きました。 
- アメリカ市場攻略の先鋒として開発されたのが、冷凍おにぎりブランド「おにぎり ふくまる(FUKUMARU)」です。この開発において、開発担当の白石莉子さんが最も大切にしたのは、おにぎりを単なる軽食ではなく、日本各地の郷土料理や米文化を世界に知らしめる“メディア”として位置づけることでした。
「『おにぎり ふくまる』の最大の特徴は、一口食べた瞬間に広がる贅沢な具材感にあります。海外の消費者にも一食としての満足感を得てもらえるよう、具材や米の分量・サイズを追求しました。具材には天むす、たこめし、ひつまぶしといった、日本各地の風土の中で育まれてきた郷土料理の味わいを選定しています」(白石さん)
おにぎりを食べる体験そのものが、日本の豊かな食文化に触れる入り口になるわけです。 
主役となる米には、岐阜県産米「ハツシモ」を採用しました。ハツシモは一粒一粒が大きく、しっかりとした粒立ちと噛むほどに広がる甘みが特徴ですが、白石さんが特に着目したのは冷凍後の復元力の高さです。冷凍おにぎりは、電子レンジで再加熱した際に食感が損なわれやすいという課題がありますが、ハツシモは加熱後も米本来のふっくらとした瑞々しさが維持される、冷凍に極めて適した特性を持っているといいます。
形状は従来の三角形ではなく、あえて「丸形」に。これは、米の粒を潰さず、空気を含ませることで、もっちりとした食感と口どけの良さを最大限に引き出すための米のプロとしての知見が活かされた選択です。また、アメリカの若年層にも親しみやすい日本文化の象徴としてNINJAをモチーフに「おにぎり忍者 ふくまる」というキャラクターを白石さん自ら考案しました。
多様性に応えるプラントベースへの挑戦と、製造現場での苦闘
- 「ふくまる」と並び、海外展開のもう一つの柱となるのが、開発担当の木山司さんが手がけた「プラントベースおにぎり」です。「アメリカ市場においてベジタリアンや多様な食習慣を持つ人々の割合は非常に高く、そうした人たちが“我慢”して食べるのではなく、誰もが同じテーブルで“本当においしい”を共有できることを目指しました」と木山さんは振り返ります。肉や魚介類、動物由来の出汁を一切排除し、米そのものの魅力を引き立てることに注力したそうです。

味のラインアップは、海外で人気の高いラーメンをイメージした「とんこつ風味」、スパイシーなぶっかけ出汁による「やみつき」、そして日本の伝統的な「かやくごはん」の3種類。動物性素材を使わずに、とんこつのコクやだしの深い旨みを再現するため、MIRA-Dashi®(ミラダシ)などの植物性素材を活用し、試作を幾度も繰り返したと木山さんは話します。
しかし、最大の困難はレシピが決まった後に訪れました。キッチンでの少量試作では成功した味が、工場の大型ラインで生産しようとすると再現できないというスケールアップの問題です。
特に油分を多く含む「とんこつ風味」や「やみつき」は、製造現場にとっての難問となりました。大量のお米を炊く際、油分が事前にお米の表面を覆ってしまうと、水分が芯まで浸透せず、炊きムラが発生してしまいます。油分を減らせば炊き上がりは安定しますが、それでは目指した満足感のある味には届きません。木山さんたちは油分の配合を数%単位で、油脂の投入タイミングを何度も調整するなど試行錯誤を繰り返しました。「妥協を許さないこの姿勢こそが、幸南食糧が世界へ届ける品質の土台になっている」と輸出事業部の飯塚誠さんは話します。
支援事業による緻密なマーケティングと2030年に向けたビジョン
- 今回のグローバル展開を支えているのが、米穀周年供給・需要拡大支援事業の活用です。幸南食糧は支援事業を通じて、アメリカにおける冷凍米飯の需要動向や競合、輸出に不可欠な栄養成分分析や原材料などを調査しました。市場調査の結果からアジア文化への馴染みが深いアメリカ西海岸を最初の足がかりにする戦略を策定。大学での内見会など若者世代への可能性をまず探っていくといいます。「2026年中の本格的な販売開始を目指し、まずはミドル層をターゲットとした大手スーパーやBtoB市場などの販路開拓を進めて、将来的には現地生産・現地販売の体制を構築することも視野に入れています」と輸出事業部の石神愛花さんが今後について語ってくれます。

- 設立50周年という大きな節目に「KOHNAN」ブランドを新たに掲げて幸南食糧株式会社が踏み出したこの一歩は、日本の米の未来を大きく変える可能性を秘めています。今回開発した「おにぎり ふくまる」「プラントベースおにぎり」は、同社にとって「新しい武器」であり「会社の顔」として自分たちの力を試し、世界に進出する「きっかけ」でもあると4名の皆さんは話します。まずアメリカ市場を皮切りに、世界各地の好みや状況を把握しながら具材や味を変化・昇華させていきたいといいます。
米のプロとしての誇りを胸に、世界中の人々の心とお腹を満たしていく。お米一粒一粒に込められた情熱と、日本の知恵が結実した「ふくまる」と「プラントベースおにぎり」は、今まさに北米の大地に向けて、確かな希望とともに旅立とうとしています。おにぎりが「ヘルシーでワクワクする日本食」として世界中で定着する日は、そう遠くないはずです。 
※本記事は2026年1月時点の情報です
【事業者紹介】
幸南食糧株式会社
大阪府松原市三宅西5-751
https://kohnan.co.jp/
【販売情報】(2026年1月時点)
・アメリカのスーパーマーケットなど
